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大阪市立美術館「華風到来-チャイニーズアートセレクション-」鑑賞記

大阪市立美術館
 特別展 華風到来-チャイニーズアートセレクション-
(4月16日~6月5日)

 学外実習で展示観賞。同館収蔵の大コレクションを活用して、中国美術の日本での受容と様式伝播の歴史を、憧憬と収集の諸相に着目して紹介。本年秋より3年間の改修工事に入るにあたり、本展及び併催の「大阪市立美術館のあゆみとコレクション」をあわせて市民・財界人の寄贈により形成されてきたコレクションの歴史を一望し、大阪の宝を守ることの重要性を展示を通じて共有する。阿部コレクションの元~清の中国書画、山口コレクションの北魏~唐の石仏、ガザールコレクションの漆工品、師古斎コレクションの碑文拓本などなど。同館としては珍しい館蔵品のみの展示ということで全資料写真撮影OK。昔必死にスケッチした龍門石窟の仏頭や、天安元年(466)如来坐像、天保8年(557)如来三尊像龕などありがたくスマホに記録。図録なし。

大田庄歴史館企画展示「せらの仏教美術」鑑賞記

大田庄歴史館
 企画展示 せらの仏教美術-仏像・仏画・経典・版木・梵音具を中心として- 
(4月8日~7月18日)

 広島県・世羅町の今高野山龍華寺と鎮守丹生神社を参拝してから、参道にある高野山領大田荘をテーマとする資料館訪問。世羅町内の寺院伝来資料を集めて展示。企画展示室では永寿寺の南北朝時代の大般若経や、珍しい塑像の福田寺阿弥陀如来坐像(室町~江戸時代)のほか、近世の仏像・仏画・梵音具を紹介。常設展示室に安置の善法寺薬師如来立像残欠(県指定文化財)は平安時代後期、11世紀ごろの作例。指定名称の立像残欠とする根拠や事情は不明ながら、襟を高く立てる特徴的な姿。同寺阿弥陀如来坐像(県指定文化財)は平安時代中期、10c末~11c初ごろの作例。図録なし。常設展示で大田荘のお勉強。

三次もののけミュージアム「妖怪のかたち2 あつめて・くらべて・かんがえる」鑑賞記

三次もののけミュージアム
 企画展 妖怪のかたち2 あつめて・くらべて・かんがえる
(3月10日~6月7日)

 同館所蔵の湯本豪一妖怪コレクションを活用して、妖怪の形がどのようにイメージされ表現されたのかを錦絵や典籍類などから丁寧に考証。冒頭に合計136体に及ぶ妖怪坐像・妖怪立像を並べる圧巻の展示空間を構築。坐像・立像のそれぞれで面貌部をさまざまな図像に基づき大きさも変化させて表現する一方で、体部は全く画一的に表して群像としての統一感を表出する。その体部は、立像では隆々とした筋肉表現と大きさをデフォルメした肢体に鎌倉時代前期仏像からの学習があり、坐像では偏袒右肩で降魔印を結び結跏趺坐する座り姿に平安時代前期如来像からの学習が顕著に見られる(坐像は正面観重視)。像表面は、全像がほぼ同様に著しく劣化が進んで素地を呈し(一部漆下地が残る)、表面に土が付着している像があり土中しているようだが、木肌の痩せや割れ、毛羽立ちが見られるのに関わらず、腕や手先、足先、角、耳など細かな部材の欠失部がほぼ見られないことは不自然な点。江戸時代とされる製作時期や福島県の旧寺伝来とする情報について慎重な検討が必要ではあるが(近現代の美術史研究を踏まえた造形である可能性が考慮される)、多種多様な妖怪を表した造形水準の高い彫像群であり、本展で示されるように、妖怪がいかに形づくられ、物語られ、言い伝えられるかを体現するような、謎含みの魅力的かつ完成度の高い妖怪群像といえる。図録なし。妖怪群像を掲載した『湯本剛一コレクション 古今妖怪累累』(パイインターナショナル、256ページ、3110円)購入。

中之島香雪美術館「来迎 たいせつな人との別れのため」鑑賞記

5月17日
中之島香雪美術館
 企画展 来迎 たいせつな人との別れのために 
(4月9日~5月22日)

 学外実習で展示観賞。現前する仏の救済が自らに及ぶことを確信させる来迎の表象を、館蔵絵画資料を核に重要資料を集めて紹介。斜め構図で阿弥陀が坐るタイプの阿弥陀来迎図、阿弥陀立像を聖衆がぐるりと囲む円陣来迎図、複数幅で群像の臨場感を強調する来迎図、観音や地蔵の来迎図など来迎表現の多様さを一望できるよい機会。正覚寺阿弥陀二十五菩薩来迎図は中尊の左右に地蔵・龍樹が並ぶ珍しい事例。現状三幅対の館蔵阿弥陀二十五菩薩来迎図は、画絹の痕跡から本来五幅の可能性。褪色もあるが暗い背景に諸尊が浮かび上がる静謐な印象。ほか稚児観音延喜絵巻(重文)、矢田地蔵縁起絵巻、鎌倉時代後期の地蔵菩薩立像(台座に雲をあらわす春日地蔵)など。展示の最後に、修理完成後初披露の帰来迎図や瀧上寺九品来迎図(重文)を並べる印象的な一室を設け、往生者のみならずそれを見送る人々のまなざしにも着目して、来迎図の機能をより広く捉える視点を提示。図録あり(116ページ、2200円)。論考、コラムとともに、充実した参考文献リストあり。有益。

鳥取県立博物館「三蔵法師が伝えたもの-奈良・薬師寺の名品と鳥取・但馬のほとけさま」鑑賞記

5月15日
鳥取県立博物館
 企画展 三蔵法師が伝えたもの-奈良・薬師寺の名品と鳥取・但馬のほとけさま-
(4月9日~5月15日)

 同館開館50周年と薬師寺玄奘三蔵院伽藍30周年の記念展。薬師寺の寺宝とともに、鳥取県の仏像や仏画を集約。薬師寺から慈恩大師像(国宝)、十一面観音立像(重文)、東塔塑像残欠・木彫像(重文)、薬師寺縁起絵巻など多数出陳して寺史・法相宗史を紹介する1章では薬師寺僧玄賓ゆかりの伯耆国阿弥陀寺後身とされる豊寧寺伝来の聖福寺阿弥陀如来立像、白山神社十一面観音坐像、賀祥区と吉祥院分蔵の鉄造白山本地仏造(県指定)を関連展示。2章では北栄町・観音寺の仏像群のうち8体(重文・県指定)のほか、三佛寺十一面観音立像(重文)、大山寺銅造観世音菩薩立像(重文)などを一堂に展観。観音寺の千手観音立像は長身で量感を強調しない引き締まった体型や、柔らかく揺れる衣縁の自然な形状など、形式化のみられない古様な表現で、平安初期(9世紀)とされる造像時期を上げて考えうる作例。3章では玄奘三蔵に関連して鳥取県・兵庫県北西部の釈迦十六善神像や大般若経を集める。城崎町温泉寺本釈迦十六善神像(重文)は玄奘が手綱を曳く馬に経典を乗せる珍しい図像。事前調査で把握した近世の釈迦十六善神像も多数パネルで紹介。図録あり(90ページ、1500円)。
 50年にわたり県内文化財の調査研究・普及啓発・保存活用に関わってきた同館でこそ可能な地域文化財展であり、他に代えがたい重要施設であることを地域の方々にも再認識してもらう内容。これからの50年に向けた博物館・美術館の再編(2025年に鳥取県立美術館分離独立)と現施設改修の動きも要注目。

なら歴史芸術文化村「観音のいます地−三輪と初瀬−」鑑賞記

5月13日
なら歴史芸術文化村
 企画展 観音のいます地−三輪と初瀬−
(4月29日~6月19日)

 開村記念展示に引き続き桜井・天理の文化財をクローズアップ。三輪と初瀬、それぞれを観音というタームでつなげ、展示室に9体の十一面観音像を林立させる。桜井市三輪・平等寺の秘仏本尊十一面観音立像は広葉樹の一木より大略を彫出した11世紀の作例、桜井市狛・長福寺十一面観音立像は狛寺伝来資料とみられる12世紀の作例、桜井市白木・安楽寺の十一面観音立像は元貝ヶ平山麓金平山寺伝来と伝わる南北朝時代の作例(市指定)。天理市福住・西念寺の十一面観音立像は、享禄4年(1531)実清作で宿院仏師源四郎・源次が番匠として助作にあたった宿院仏師研究上の重要作例。聖林寺十一面観音立像の精巧な模刻像は東京藝術大学朱若麟氏の手になるもので、ライティングも工夫されて荘厳な雰囲気。聖林寺像の木心部構造模型(東京芸大製作)や、大正4年に修理された際の奈良県庁文書(奈良県立図書情報館蔵)も紹介。地域に密着した調査活動によって見いだされた初公開資料を含む文化財に間近に接し、情報を共有化することのできる施設がある素晴らしさ。大学等との積極的な連携による仏教美術・文化財の普及啓発用資料の製作も特筆される活動。図録あり(38ページ、1000円)。

大和文華館「泰西王侯騎馬図屏風と松浦屏風-越境する美術-」鑑賞記

5月10日
大和文華館
 特別企画展 泰西王侯騎馬図屏風と松浦屏風-越境する美術-
(4月8日~5月15日)
 学外実習で展覧会観賞。前近代の日本美術における洋風画に着目して資料を集める。戦国期のキリシタン絵師による泰西王侯騎馬図屏風(重文・サントリー美術館)、婦女弾琴図や、江戸時代前期の南蛮屏風、南蛮風モチーフを含む松浦屏風(国宝)、江戸時代後期の小野田直武筆江の島図、司馬江漢筆海浜漁夫図、亜欧堂田善筆駿河湾富士遠望図、石川孟高筆少女愛猫図など、館蔵の名品をフル活用して、初期洋風画、南蛮美術、後期洋風画の諸相を一望する貴重な機会。サントリー美術館から特別出陳の資料について解説したリーフレットあり(カラー4ページ)。 

奈良国立博物館特別展「大安寺のすべて-天平のみほとけと祈り-」鑑賞記

4月27日
奈良国立博物館
 特別展 大安寺のすべて-天平のみほとけと祈り-
(4月23日~6月19日)

 大安寺1300年の歴史と文化を、奈良時代彫像と多数の考古資料による古代寺院の姿、著名な霊験像たる大安寺釈迦像への追憶、大安寺に関わる古代の高僧、中世大和における大安寺の位置づけにテーマを分けて紹介。同寺伝来の9軀の奈良時代彫像が全て四囲より観賞できる貴重な機会であり、その中でも秘仏本尊十一面観音立像は、頭部を江戸時代の後補とするものの、請来檀像を彷彿とさせる諸表現とともに、誇張のない自然な抑揚の肉身表現の中に、腰を捻って左大腿部を前へ出す動きを的確に表し、立体表現として際だった完成度を示す。四天王立像のうち伝持国天立像も緊張感にあふれた造形。眼福。ほか、展示文脈構築にあたり、長谷寺法華説相図、奈良博刺繍釈迦如来説法図(前期)、東大寺倶舎曼荼羅(後期)、岡寺義淵僧正坐像、文化庁虚空蔵菩薩坐像、薬師寺八幡三神坐像、西大寺金銅透彫舎利容器といった奈良博所蔵・寄託資料の名品を有効に活用しつつ、神護寺釈迦如来像(赤釈迦・後期)、西住寺宝誌和尚立像、神応寺行教律師坐像、永興寺四天王立像など、大安寺との意外な接点を有する資料も集め、展覧会名からの想像を超えるバラエティに富んだ内容。必見。図録あり(224ページ、2500円)。

龍谷ミュージアム特別展「ブッダのお弟子さん-教えをつなぐ物語-」鑑賞記

龍谷ミュージアム
 特別展 ブッダのお弟子さん-教えをつなぐ物語-
(4月23日~ 6月19日)

 令和2年春、展示作業完成しながらコロナウイルス感染症拡大により1日も開かれずに中止となった同名の展示を、一部資料を入れ替えつつ、満を持して再開会。仏弟子を巡る仏典の記述を追いつつ、十大弟子や羅漢などさまざまに表されたその姿を紹介。十六羅漢像の諸本を清凉寺本(北宗・国宝)、東博本(平安・国宝)、妙興寺本(元・重文)、月橋院本(鎌倉・重文)、禅林寺本(鎌倉・重文)、津観音大宝院本(明)と多数収集するほか、大徳寺五百羅漢図(南宋・重文)、長谷寺大般若経仏(朝鮮王朝)、如意輪寺龍華会図(朝鮮王朝)、白鶴美術館薬師如来説法図(五代)、西教寺礼仏弥陀懺法(明)など中国・朝鮮の資料を積極的に集積し、アジア全体を俯瞰しながら仏教の思想と文化を見つめる同館の特色を遺憾なく発揮。彫刻では京都国立博物館十大弟子立像(鎌倉・重文)、海雲寺迦如来坐像及び阿難・迦葉立像(南北朝・康俊作)、泉涌寺羅漢坐像(室町)など。図録は2年前に発行した同名図録(216ページ、2200円)及び、今回追加出陳した資料を掲載する別冊(72ページ、1200円)の2冊組み。

京都国立博物館特別展「最澄と天台宗のすべて」鑑賞記

4月26日
京都国立博物館
 伝教大師1200年大遠忌記念特別展 最澄と天台宗のすべて
(4月12日~5月22日)

 学外実習で展覧会観賞。東京・九州・京都の国立博物館連携による伝教大師1200年大遠忌記念展の最終会場。最澄関係資料、天台教学及び密教関係資料、本山末寺の関連美術作品を集約。伝教大師請来目録(延暦寺)、刺納衣(延暦寺)、五部心観(園城寺)など宗門の重宝はじめ、宝相華蒔絵経箱(延暦寺)、六道絵(聖衆来迎寺)、線刻釈迦三尊等鏡像(泉屋博古館)など国宝を多数含む名宝ずらり。仏像では法界寺薬師如来立像、浄土曼荼羅刻出龕(耕三寺)、等妙寺菩薩遊戯坐像をじっくり観賞。興善寺釈迦如来坐像(寛治7年・1093)と薬師如来坐像は昨年度より修理事業が開始されていて寺外初公開となったもので、定朝様式の紀年銘作例を間近に観賞できるありがたさ。図録あり(416ページ、3000円)。

Appendix

プロフィール

大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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